椿の香り

冬も終わりに近くなり、2月ごろから少しずつ椿の花を見かけるようになりました。梅や桜に比べ、香りのない花と思われている椿ですが、香りが強い品種もいくつか確認されています。

椿イメージ日本で最初に椿の香りに注目した人物は、いけばな近代化の先駆者として有名な故安達潮花と言われています。椿愛好家でもあった安達氏によって、「匂吹雪」と名づけられた肥後ツバキの一種は、花の香りの基本成分となるリナロールが多いのが特徴で、さわやかな甘い香りを放ちます。

琉球列島産の「ヒメサザンカ」は、ツバキ属の中で一番強い芳香を持ち、香りの強い椿を作り出す品種改良のため、交雑の親としてよく使われます。その香りは「梅様の香りにヒアシンス様のグリーンノートが加わった」ようと言われ、主な香気成分に、安息香酸メチル、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコールが含まれます。

椿に香りがあると言っても、その香りはほとんどが花に顔を近づけないと匂わないようなかすかなもの。香りの源は、花の真ん中から生えている糸状の雄しべと、雌しべの子房の部分であることが分かっています。

凛としたつつましやかな花 椿。深緑の葉と花のコントラストの美しさ。その姿かたちを中心に昔から愛されている椿ですが、今後はその香りも楽しみの一つとなっていくのではないでしょうか。

今年の椿は開花が遅れているようで、これから満開になりそうです。花の匂いをそっと嗅いで、椿の香りを楽しんでみてはいかがでしょう。

(担当:小林)

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